授かり婚とは、入籍前に子どもを授かり、その後に入籍をする結婚のスタイルを指します。一見すると「デキ婚(できちゃった婚)」と同じように思えますが、実はニュアンスに大きな違いがあります。
授かり婚は、付き合っている段階からお互いに結婚を意識していて、「わたしたちの子供を授かりたい」「子どもをいつ授かっても結婚するつもりでいる」という意思があるうえでの妊娠・結婚というスタイルです。つまり、結婚の意思があった上での妊娠というポジティブな意味合いを持っています。
一方、デキ婚は「子どもができてしまったから結婚する」というニュアンスが強く、妊娠が先にあり、それをきっかけに結婚を決めるというケースを指します。ウェディング業界では「デキ婚」というネガティブなイメージを払拭するために、「授かり婚」「ダブルハッピー」「マママリッジ」「おめでた婚」などの呼び名が生まれました。
現在では、結婚に対する価値観の多様化に伴い、授かり婚に対する世間のイメージもポジティブになりつつあります。厚生労働省の統計によると、授かり婚の割合は約18.4%で、約5組に1組のカップルが授かり婚を選んでいるという結果が出ています。
授かり婚には、通常の結婚とは異なる独自のメリットがあります。これらのメリットを理解することで、授かり婚という選択肢の価値が見えてきます。
まず第一に、「幸せが2倍になる」ということが挙げられます。結婚だけでも人生の大きな喜びですが、授かり婚では結婚と出産という2つのおめでたいことが重なり、一気に家族が増えることでより大きな幸せを感じることができます。
次に、「結婚までのプロセスがスピーディーに進む」というメリットがあります。通常の結婚では、お互いに結婚する意思があっても具体的な期限がないため、どうしても後回しになりがちです。しかし授かり婚の場合は出産までの期間が限られているため、結婚に向けての準備が自然と加速します。
また、「人生の優先順位が明確になる」というメリットもあります。子どもを授かることで、家庭や将来設計を優先的に考える機会が得られ、夫婦間の目標や方向性が一致しやすくなります。新たな命を迎える準備を一緒に行うことで、自然とパートナーシップが強まるでしょう。
さらに、「結婚式の内容を柔軟に検討できる」というメリットもあります。授かり婚の場合、出産のタイミングを考慮して結婚式を行わないカップルも少なくありませんが、子どもが生まれた後に改めて家族で結婚式を挙げる「後撮りウェディング」や「ファミリー婚」という選択肢もあります。家族全員で祝う結婚式は、より一層思い出深いものになるでしょう。
授かり婚にはメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。これらを事前に理解し、適切に対処することが大切です。
まず最も大きなデメリットとして、「ネガティブなイメージを持たれる可能性がある」ことが挙げられます。結婚に対する価値観が多様化している現代でも、特に年配の世代では「計画性がない」「順番が違う」などとネガティブな印象を持つ方もいます。両親や親族からの理解を得るために、誠実な態度で挨拶し、結婚するつもりだったことをしっかりと伝えることが重要です。
次に、「経済的な不安」というデメリットがあります。結婚準備や出産、育児には想像以上にお金がかかります。特に若い年代のカップルに多い授かり婚では、経済的な準備が十分でないまま結婚生活をスタートすることになるため、金銭面での苦労が生じる可能性があります。結婚指輪を用意できなかったり、結婚式を先延ばしにしたりするケースも珍しくありません。
また、「夫婦の時間が持てない」というデメリットもあります。通常の結婚では、夫婦二人の時間を十分に楽しんでから子育てに移行することが多いですが、授かり婚では結婚から出産、子育てと慌ただしく進むため、夫婦だけの時間を持つことが難しくなります。子育てが始まると自分たちの時間はさらに限られてしまうため、意識的に二人の時間を作る工夫が必要です。
さらに、「子育ての方針の違いによるすれ違い」も起こりやすいです。授かり婚の場合、結婚してすぐに子育てが始まるため、子育ての方法について十分に話し合う時間がないまま育児が始まることがあります。方向性の違いによるすれ違いを防ぐために、早い段階で子育てについて二人でよく話し合うことが大切です。
授かり婚を選んだカップルが、スムーズに結婚までの準備を進めるためには、適切な流れとスケジュール管理が重要です。妊娠期間は限られているため、効率的に準備を進める必要があります。
まず妊娠が判明したら、お互いの気持ちを確認し合うことが第一歩です。結婚の意思を再確認し、今後の生活について話し合いましょう。その後、両親への妊娠・結婚の報告を行います。この際、単なる妊娠の報告ではなく、結婚の報告をする気持ちで話すことが大切です。「妊娠したから結婚する」のではなく、「結婚しようと思っていたところ妊娠した」という順序で伝えると、親御さんも安心するでしょう。
両親への報告が済んだら、結納や両家顔合わせを行うのが一般的です。その後、職場や友人への報告も順次進めていきます。妊娠初期はつわりなどで体調が不安定になりやすいため、無理のないスケジュールを組むことが重要です。
結婚式については、妊娠中に行うか、出産後に行うかを検討する必要があります。妊娠中に結婚式を行う場合は、安定期(妊娠5〜7ヶ月頃)に設定するのが一般的です。ドレスのサイズ調整や体調管理に配慮しながら準備を進めましょう。出産後に結婚式を行う場合は、子どもも一緒に参加できる「ファミリー婚」という選択肢もあります。
また、妊娠中は体調の変化に合わせて柔軟にスケジュールを調整することが大切です。特に初期はつわりや体調不良で行動が制限される場合もあるため、無理のない計画を立てましょう。パートナーのサポートも欠かせません。二人で協力して準備を進めることで、結婚生活のスタートをスムーズに切ることができます。
授かり婚から幸せな結婚生活を築くためには、いくつかの重要なポイントがあります。これらを意識することで、より良い家族関係を構築することができるでしょう。
まず最も重要なのは「コミュニケーションの充実」です。授かり婚の場合、通常の結婚と比べて準備期間が短く、すぐに子育てが始まるため、お互いの価値観や考え方をしっかりと話し合う時間が限られています。そのため、日常的にコミュニケーションを取り、お互いの気持ちや考えを共有することが大切です。特に子育ての方針や家事分担、将来の計画などについては、早い段階で話し合っておくことをおすすめします。
次に「経済面の計画的な準備」も重要です。結婚生活と子育てには予想以上の出費がかかります。出産費用、育児用品、教育費など、長期的な視点で家計を管理する必要があります。可能であれば、二人で家計簿をつけたり、将来の教育費の貯蓄計画を立てたりするなど、計画的な資金管理を心がけましょう。
また「パートナーへの感謝と思いやり」も欠かせません。授かり婚では、女性は妊娠・出産という大きな身体的変化を経験します。男性はそのサポート役として、思いやりを持って接することが大切です。同時に、女性も男性が突然父親になる不安や戸惑いを理解し、お互いに感謝の気持ちを伝え合うことで、より強い絆を築くことができます。
さらに「子育てと夫婦の時間のバランス」も意識しましょう。子どもが生まれると、どうしても子育てが中心の生活になりがちです。しかし、夫婦関係を大切にすることも、家族全体の幸せには不可欠です。定期的にデートの時間を作ったり、子どもが寝た後に二人で会話する時間を持ったりするなど、夫婦の時間も大切にしましょう。
最後に「周囲のサポートを活用する」ことも重要です。両親や親族、友人など、周囲の人々のサポートを積極的に受け入れることで、育児の負担を軽減することができます。また、同じく授かり婚を経験した先輩ママ・パパの話を聞くことで、様々な不安や悩みを解消することができるでしょう。
授かり婚は決して簡単な道ではありませんが、お互いを尊重し、協力し合うことで、素晴らしい家族を築くことができます。子どもの成長とともに、夫婦の絆も深まっていくことでしょう。
授かり婚を選ぶ際には、物理的な準備だけでなく、心理的な準備も非常に重要です。突然の妊娠と結婚という大きな人生の転機に直面したとき、様々な感情や不安が生じるのは自然なことです。これらの感情と向き合い、心の準備をすることで、より健全な家族関係を築くことができます。
まず、「自分自身の気持ちを整理する時間を持つ」ことが大切です。妊娠が判明した時の喜びや驚き、将来への不安など、様々な感情が入り混じることがあります。これらの感情を無視せず、自分自身と向き合う時間を持ちましょう。必要であれば、日記を書いたり、信頼できる人に話を聞いてもらったりすることも効果的です。
次に「パートナーとの関係性の再確認」も重要です。授かり婚は、子どもの存在を前提とした結婚になるため、お互いの関係性について改めて考える機会となります。子どもがいなくても二人の関係は成り立つのか、お互いに対する愛情や信頼はあるのかなど、根本的な部分を見つめ直すことが大切です。
また「親になる心の準備」も欠かせません。結婚と同時に親になるということは、大きな責任と役割の変化を意味します。自分自身の親との関係を振り返ったり、親としてどのような存在でありたいかを考えたりすることで、親としての自覚を育むことができます。
さらに「価値観の違いを受け入れる柔軟性」も必要です。結婚生活では、育った環境や経験の違いから、様々な価値観の違いが表面化します。特に子育てに関しては、意見が分かれることも多いでしょう。お互いの違いを尊重し、歩み寄る姿勢を持つことが、円満な家庭を築く鍵となります。
授かり婚は、予期せぬ妊娠というきっかけから始まることが多いですが、それは必ずしもネガティブなことではありません。むしろ、人生の大きな転機として、自己成長の機会と捉えることができます。子どもの存在をきっかけに、より成熟した大人へと成長し、責任ある親として、また一人の人間として、自分自身を高めていくことができるのです。
心の準備ができていれば、授かり婚から始まる家族の絆はより強固なものとなり、子どもの成長とともに、夫婦としても、親としても、一人の人間としても成長していくことができるでしょう。授かり婚は単なる「できちゃった結婚」ではなく、新たな人生の始まりとして、ポジティブに捉えることが大切です。